2023 年 5 月 7 日

・説教 ルカの福音書6章12-16節「主イエスの弟子たち」

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復活節第5主日
2023.5.7

鴨下直樹

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 今日の聖書箇所の冒頭12節にこのように書かれています。

そのころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。

 主イエスは夜通し祈っておられます。何を祈っていたかというと、この祈りを通して十二弟子をお選びになられたのです。

 この「12」という数字は特別な意味を持つ数字です。イスラエルの民は十二部族あります。この12の部族全てで神の民です。つまり、12というのは神の民を表す数字なのです。主イエスの十二弟子も、神の民全てを表します。この神の民全ての代表として、主イエスは12人をお選びになりました。この12人は新しいイスラエルの代表となるのです。そのために、主イエスは山に登られて夜を徹して祈られたのです。

 こうして、これから生まれる新しいイスラエルのために、主は先立って祈ってくださったのです。この新しいイスラエルというのは、今の私たちの教会のことも含まれています。主は、この弟子たちを中心とした新しい神の民イスラエルを再創造なさったのです。

 ルカは、こうして選ばれた12人の弟子たちのことを、「使徒」という名を与えられたと、続く13節で記しています。「使徒」というのは、古代ギリシャでは遠征に軍隊や艦隊を派遣することを意味した言葉でした。そのために正式に信任されて、権限を与えられた代表という意味を持つようになったようです。

 ここで選ばれた12人の使徒たちも、主イエスから信任を受けて、特別な使命のために派遣される、新しい教会の代表となっていきます。

 主イエスから信任を受けた、特別な使命を与えられた「使徒」というくらいですから、どんなに立派な人たちなのだろうかと思って見てみると、この弟子たちは本当に、かなりユニークな面々だということが分かります。

 14節から16節に、この十二使徒と呼ばれた人々の名前が出てきます。このリストを見ているだけでも、かなり個性的な人々の集まりであったことが分かります。

 まず気づくのは、同じ名前が3つもあります。ペテロと呼ばれたシモンの他に、熱心党員のシモン。漁師であったヤコブとヨハネの名前がありますが、アルパヨの子もまたヤコブです。しかも、このアルパヨの子のヤコブの子どもの名前にユダという名前があって、最後にイスカリオテのユダという名前も出てきます。このユダは主イエスを裏切るユダです。

 12人の中に3つの名前が重なっているわけですから、半分の名前は重なっていることになります。

 私には兄弟が二人ありますが、「なおき、ただし、けんじ」といいます。ある時、一番下のけんじが、小学校から帰ってきた時に、「今日、算数の問題で、なおき、ただし、けんじの名前が全部セットで出てきた。なんでこんなにありふれた名前にしたの!」と親に怒っていたことがありました。

 けれども、このシモンとヤコブとユダは、もっとポピュラーな名前です。このシモンとその兄弟アンデレ、そして続くヤコブとヨハネは、みな漁師たちでした。そして、それぞれ兄弟で、主に仕えています。ヤコブとヨハネには「ボアネルゲ(雷の子)」という名がつけられています。これは、気が短く、すぐ怒るというところから来ているそうです。短気で怒りっぽい人であっても、主の目にかなったのです。

 細かく全ての弟子について説明することは出来ませんが、次にピリポとバルトロマイという弟子が出てきます。この二人はいつもセットで出てきますが、他の福音書ではこのバルトロマイはナタナエルという名前で出てきています。

 この二人は弟子たちの中でもかなり優等生で、ナタナエルとして出てくる他の箇所では主イエスに「これこそイスラエル人」と呼ばれた人物でした。その正反対なのが次に出て来る取税人のマタイです。前回の5章で出てきた、ローマのためにユダヤ人の同胞からお金を取っていたような人物です。そして、マタイのような人をなんとかしたいと考えていたのが、熱心党員と呼ばれる人です。熱心党員のシモンとマタイなどは、仲良くするのは難しかったと思うのです。

 他にも石橋を叩いて渡るトマスのような弟子もいます。アルパヨの子ヤコブとユダ(別の福音書でタダイと書かれています)、この二人はどうも親子のようです。そこに、イスカリオテのユダです。このユダだけが、ガリラヤ以外の出身者ということになります。

 かなりキャラの強い人たちですから、仲良くやっていけたとは到底考えられません。それぞれ主義主張が異なっているのです。短気な兄弟や、慎重なトマス、突発的に行動してしまうペテロのような弟子までいるのです。これが、主イエスが徹夜の祈りをして、弟子として任命した十二使徒たちです。

 ここから何が分かるかというと、主イエスにとって、その人の性格やタイプ、主義主張や出身地というようなものは、何の問題にもならないのだということです。

 少し、残念な言い方をすれば「神の選び」というのは、その人が特別何か秀でたところがあったから神の目に留まったのではないと言うことも出来るのかもしれません。

 私たちは、よく他のクリスチャンと比較して、自分はあまり良いクリスチャンではないとか、自分はダメダメなので教会に行きづらいと考えることがあるかもしれません。けれども、主イエスは初めから、その部分を見ておられるわけではないので、その部分を気にする必要はどうやら全くなさそうだということなのです。

 そう聞くと、安心する人と、がっかりする人が出て来るのかもしれません。「自分を選んでくださった神様は、やっぱり見る目があるな」と思っていた方にとっては、少しがっかりするのかもしれません。けれども、多くの人は安心するのではないでしょうか。

 テストで100点を取るようなことを初めから期待されているわけではないのです。むしろ、その反対です。「自分のような落第点スレスレの者であっても、主が受け入れてくださるので、何とか毎日喜んで歩ませてもらっています」というような歩みが出来ればと思うのです。

 この弟子たちが大きく変わっていくのは、かなり時間がたってからのことです。それは、主イエスが十字架にかけられて三日の後、復活の後、もっと言えばペンテコステを迎えて、聖霊が与えられてからようやく、彼らは積極的に人々の前に立つことが出来るように変えられていくのです。

 以前、赤塚さんから、この教会を開拓してくださったストルツ先生が、芥見で伝道をするかどうか決めるために、その前に伝道しておられた古知野の教会から芥見へ視察に来られたという話をお聞きしました。次にどこで伝道しようかと祈りながら、この芥見で伝道することになったのです。

 ちょうどその頃、この地域に多くの方々が引っ越して来られて、教会を探しているところでした。まさに、ストルツ先生の祈りと皆さんそれぞれの祈りが集められてこの芥見教会が出来たのです。けれども、ストルツ先生の祈りや、皆さんの祈りに先立って、ここで主が祈っておられるのです。こうして芥見には、こんなにも個性豊かな、ユニークな方々が集うようになったのです。

 主はご自身の教会を建て上げるにあたって、まず山に登って祈るところから始められました。そして、そのところにユニークな方々が招かれて来たのです。

 全ては祈りから始まるのです。その祈りは、この主イエスの祈りから始まったと言っても過言ではないのです。

 なぜ、主イエスは山に登ったのか。それは、また平地へと降りて来るためであると、ある牧師は言いました。主イエスは人々の中に入って来られるのです。

 この次の17節から「平地の説教」と呼ばれる主の説教が語られます。「あれ? 山上の説教じゃないの?」と思われる方もあるかもしれません。

 続く17節で、わざわざ「山を下り、平らなところにお立ちになった。」と記されています。主は、人々のいる平地に下りて来られて、み言葉を語られるのです。

 それは、「平地」に私たちが住んでいるからです。主イエスは高い山の頂におられて、「ここまで登って来なさい」と言われる方ではないのです。主イエスの方から平地にいる私たちのところに降りて来てくださるのです。

 そして、平地にいるシモンやヤコブ、それにユダといった人々を招かれたように、この芥見にいる皆さん一人ひとりに語りかけられるのです。私たちを弟子にすることを通して、新しいイスラエルである神の民を、もう一度再創造なさるのです。

 主は私たちのところまで来られて、私たちの生活の場で、み言葉を語り、そこで人々を弟子として招かれるのです。そして、今の時代も私たちは、主の弟子として呼び集められ、選ばれて、主の教会を作り上げていくのです。

 そこには、色々な性格の人がいます。いろんな職業の方や、さまざまな異なる出身地の方々がいます。みな違うのです。そして、誰もが違っていることを喜ぶことが出来るのです。みんな立派でなくてもいいのです。みんな違っていていいのです。その真ん中に主イエスがおられ、主の言葉がそこに語られる時に、主の言葉と共にすべてのことが作り出されていくのです。

 この主の教会に私たちは招かれているのです。そして、互いの違いを喜び合いながら、共に愛することを、赦し合っていくことを学んでいくのです。こうして、愛の教会がこの岐阜の芥見にも、築き上げられていくのです。

 お祈りをいたします。

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