2018 年 12 月 24 日

・燭火礼拝説教 イザヤ書 60章1―3節 「あなたの光が来る」~レンブラントのクリスマスの絵画による~

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2018.12.24

鴨下 直樹

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起きよ。輝け。まことに、あなたの光が来る。主の栄光があなたの上に輝く。
見よ、闇が地をおおっている。暗黒が諸国の民を。しかし、あなたの上には主が輝き、主の栄光があなたの上に現れる。
国々はあなたの光のうちを歩み、王たちはあなたの輝きに照らされて歩む。

イザヤ書 60章1~3節

 今年の燭火礼拝はオランダの画家レンブラントの描いたクリスマスにまつわる絵をご覧いただきながら、聖書を聞いていただきました。

 レンブラントが最初にクリスマスの物語を描いたのは1627年、レンブラントが21歳の時で、「エジプトへの避難」というタイトルがつけられています。レンブラントは裕福な家族のもと、9人兄弟の6人目として育ちます。はじめ学者の道を進もうとラテン語学校を卒業したあと、15歳で学び始めた大学を辞めて画家の道を目指します。最初の先生に3年間ついて学び、そのあとイタリヤでカラヴァッジョの弟子として学んできたラストマンという画家のもとで絵を学びます。ところが半年後には独立しています。独立後もラストマンから学び続けたようです。そんな時代に書かれたのが最初の絵です。

レンブラント作 「エジプトへの逃避」
 私が興味を持つのは、クリスマスの物語を描く時に、大抵はもっとクリスマスらしい場面を描くのだと思うのですが、レンブラントはなぜか、この場面を選んだのです。エジプトへの避難というのは、東方の博士たちが、はじめ救い主の誕生の星を見つけた時に、当時イスラエルを支配していたローマの総督であるへロデ王のところに訪ねていったのです。そこで、聖書の預言によると、ベツレヘムで救い主が生まれるという預言があることを聞き、また、その星が博士たちを導いて、主イエスの生まれたところを訪ねることができたわけです。ところが、その後博士たちは夢を見て、帰りにヘロデ王のところに行かないように告げられたために、どこで生まれたのかをヘロデ王に知らせませんでした。そのために、ヘロデ王はベツレヘムの2歳以下の赤ちゃんを殺してしまえと命令を出すのです。その時、夢でヨセフはベツレヘムにいることが危ないと聞いて、エジプトへ避難をしたのです。

まさに、主イエスがこられたこの世界は闇と死に支配された世界であることがよく分かる出来事です。レンブラントの描いたマリヤの腕に抱かれている主イエスの光は、まだ弱々しいのです。闇の中に輝く光とはまだなり得ていません。

rembrandt_joseph_dream_1945 レンブラントがその次にクリスマスの出来事を描いたのはそれから18年後のことです。この18年の間にレンブラントは非常に多くのことを経験します。サスキアという裕福な法律家の娘と結婚をします。4人の子供をもうけますが、3人は生まれてすぐに死んでしまいます。結婚したのは1632年、レンブラント26歳の時です。ところが、この妻サスキアは結婚して8年後に亡くなってしまいます。そして、この後からレンブラントの人生は坂道を転げ落ちるようになっていきます。それまでの間、レンブラントは幻想的な装飾やエキゾチックな雰囲気を描いていたのですが、この後、そういった装飾性を排除した作品を知るようになっていきました。この2枚目の絵を描く2年前に、サスキアとの間に残った子どもの面倒を見るためにひとりの女性を雇いますが、結婚しなかったということで訴えられてしまいます。そういう生活の大変な中で描いたのが、この「ベツレヘムの馬小屋でのヨセフの夢」という絵です。この絵が描かれたのは1645年レンブラント39歳の時です。

そこには華麗な装飾はどこにも見当たりません。そして、ただ、屋根からこぼれ落ちる天からの光だけが唯一の装飾として描き出されています。貧しいマリヤとヨセフを慰めるものはただ、神からくる光だけだと物語っているのです。

Adoration_of_the_Shepherds_1646 そして、羊飼いたちの礼拝を描きました。これも、その翌年1646年に描いたものです。この絵になると、光は天からではなく、赤子の主イエスのところから輝きはなっています。

レンブラントが経験していった生活の大変さ、結婚生活の難しさ。そういう現実的な問題が、まさに闇のように覆いかぶさって来る時、どこに慰めがあるのか、光はどこから来るのか。レンブラントはその光を、主イエスに求めたのだと私は思うのです。

預言者イザヤはこのように語っています。

「起きよ、輝け。まことに、あなたの光が来る。主の栄光があなたの上に輝く。見よ、闇が地を覆っている。暗黒が諸国の民を。しかし、あなたの上には主が輝き、主の栄光があなたの上に現れる。」

今、この礼拝堂の中にはみなさんの前にある小さなともしびだけがあなたを照らしています。クリスマスイブの今宵、私たちは主イエスによって世界にもたらされた光を覚えて、こうして礼拝を捧げているのです。それは、レンブラントが見出した光、希望の光、慰めの光を私たちに思い起こさせてくれます。

私たちの周りには実にさまざまな闇があります。私たちはなにかが起こればすぐに闇に支配されてしまう不確かな歩みをしています。それが、この世界です。けれども、主イエスがそのような闇の世界に生まれてくださるということは、その闇の中にあって希望となり、励ましとなり、支えとなるために来られたということです。神が、私の闇の真っ只中に、共にいてくださる。このクリスマスにもたらされた福音こそが、私たちを支える救いとなるのです。

今宵、主イエスは闇の世界にお生まれになられました。この闇の世界に光をもたらすために。それで私たちはこの救いの光である主イエスの誕生を、心から喜ぶのです。

お祈りをいたします。

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