・説教 ローマ人への手紙15章1-6節「心を一つに」
2022.07.03
鴨下直樹
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先週の祈祷会で、今朝の聖書箇所の学びをした時にF長老がこんな質問をされました。
「このローマ人への手紙は、ローマに住んでいる人と、その土地に住んでいるユダヤ人のキリスト者の両方に宛てて書かれたものなんですね?」
私は、はじめこの質問の意図がよく分かりませんでしたが、お話ししているうちに、だんだんその質問の意味が分かるようになってきました。
私たちは、このパウロの手紙のことを、ローマ人への手紙と言っています。そうすると、私たちは無意識的に、ローマに住んでいるローマ人に向けて当てられた手紙だと思い込んでしまいます。けれども、当時のローマにはすでに大勢のユダヤ人たちが住んでおりました。ある聖書学者は、さまざまな当時の文献を読むと、当時のローマには少なくとも4万人のユダヤ人がいただろうということが分かると説明しています。そのユダヤ人たちは、当然ローマにあるシナゴーグと呼ばれるユダヤ人の会堂に集まります。そして、ローマで生まれたばかりの教会も、ユダヤ人の会堂を足掛かりにして生み出されていきました。
ですからローマにある教会には、多くのユダヤ人たちの信者がいて、そこにはローマ人の信者もいたことになるわけです。
ところが、聖書はローマ人に宛てて書いたというので、どうしても私たちはローマの教会にいたであろうユダヤ人キリスト者たちの存在のことをつい忘れてしまうのです。
それで、新共同訳聖書や、それに代わって訳された協会共同訳聖書では「ローマの信徒への手紙」としました。こちらの方が、誤解を招かなくなります。ローマの教会の信徒は、はじめから二種類の人たちが集まっていたのです。
この二種類の人々が集まる教会には、当然のこととして、それぞれ異なる習慣や風習があります。ローマに住んでいた人々は、キリスト者になる前から、そのローマの習慣で生きてきましたので、ローマの習慣についてそれほど疑問には感じません。
けれども、ユダヤ人はそうではありませんでした。旧約聖書を読むと、ユダヤ人がカナンの土地に住むようになる時に、神様は徹底して、異教の習慣を取り入れないようにと、律法で戒められたのです。それこそ、もともと住んでいたカナン人の食べ物の習慣は受け入れませんでした。豚やラクダを食べるということも禁止しましたから、その理屈でいけばローマに引っ越ししたユダヤ人たちもローマの食文化を簡単に受け入れられなかったのは当たり前のことでした。
ところが、パウロの伝道していた時代になりますと、神様は、食べ物のことは問題にしないと方針を転換します。これが、そもそもの混乱の原因になっていったわけです。
新しい時代。新しい契約の時代に教会は突入しました。ですから、古い考え方から抜け出せない、ユダヤ人と、新しいパウロの福音を聞いてキリスト者になる人たちと、二種類のキリスト者たちが当時の教会では、どちらの言い分が正しいのかということで争っていたのです。
それが、このローマ書の14章から続いているテーマです。これからは、二つの考え方の人がお互いに理解し合って、受け入れ合って、愛し合っていきましょうとパウロは言っているのです。
みなさんも、これまでの人生経験の中で、何度となく、違うものの考え方をする人とトラブルになるということがあったのはないでしょうか? (続きを読む…)