・説教 詩篇34篇14節「平和を求め、それを追い続けよ」
2019.01.06
鴨下 直樹
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2019年のローズンゲンの定めた年間聖句はこの御言葉です。テーマは「平和」です。「平和を求めよ」と言うのです。
アメリカの映画で、特に現代のものなどを見ていますと、スピーチをするという習慣が時々出てきます。そして、たいていの場合、そのスピーチの結びとして必ず出てでて来るセリフとして「世界平和のために」と言ってスピーチを終えるわけです。もうそれは、ほとんど建前のようになっていて、少し滑稽な描き方さえされています。「世界平和」というのは、誰もが納得できる良いスローガンなのですが、では平和のために何をしたらよいのかということは、あまり問題にされません。とにかく、「世界平和」と口にすることが大事になっています。
けれども、私たちは昨年、何度も災害を経験し、あまりにもいろいろと起こりすぎて、この世界は次々に起こる事柄に、心がついていかない有様です。元旦礼拝でもお話ししたのですが、昨年の2018年を表す漢字として「災」という字が取り上げられました。この字は、学校や企業や、アンケートをもとに決められるのだそうですが、圧倒的に多くの人が、昨年は「災い」の多い一年であったと感じているわけです。「災い」という言葉の背後には、多くの自然災害や、戦争というのがその背景に考えられるわけです。そして、私たちはこういう災いに対して、自分の力では何もなしえないという諦めの気持ちがあるのだと思います。そして、その災いという字の対極にあるのが、今回の「平和」という言葉なのではないでしょうか。
今回の年間聖句である詩篇34篇ですが、この14節の詩篇の少し前の箇所11節から見てみると、そこではこう書かれています。
来なさい。子たちよ 私に聞きなさい。主を恐れることを教えよう。
いのちを喜びとする人はだれか。幸せを見ようと 日数の多いことを愛する人は。
あなたの舌に悪口を言わせず 唇に欺きを語らせるな。
悪を離れて 善を行い 平和を求め それを追い続けよ。詩篇 34篇11~14節
この詩篇の詩人は、子たちに「しあわせな日々を送りたいと思うなら」と語りかけています。そして、その「幸せ」ということが、「平和を求める」ということに続くように書かれています。詩篇の作者、ダビデは、ここで子どもたちに語りかけています。幸いな日々というのは、悪口を言わず、欺きを語らない。一緒に生きている人を大切にすること。まず、そこからはじめることだと語っているのです。人の悪口を言わない、人をだまさない。そういうことが、自分の幸せを作ることになり、それが平和を築き上げることになるのだと教えているわけです。
平和というのは、ただ世界平和を訴えていれば実現するというものではないのです。子どもの時から、幸せに生きたいと願うなら、人の悪口を言わないこと、嘘をつかないこと。そういう、人との関係を築くために基本的なことをしっかりと覚えるところにしか、幸いはないし、平和もないのだということを、ここでしっかりと教えているわけです。 (続きを読む…)