2022.03.27
鴨下直樹
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午前10時30分よりライブ配信いたします。終了後は録画でご覧いただけます。
パウロは当時の文化と世界の中心都市であるローマに手紙を書き送っています。この時、パウロはまだローマに行ったことがありません。けれども、パウロから福音を聞いた人々がローマに移って行って、そこで集まりを開くようになったのです。
そこで、パウロはまだ見ぬローマの教会の人たちに、主イエスが私たちに与えてくださった救いについて、丁寧に書き記していきました。この手紙を読むだけでキリスト教のことが分かって、信仰に入ることができるようになることを願ったのです。
1章から8章では、信仰の土台となる主イエスが私たちに何をしてくださったのかを書きました。そして、そのあとの9章から11章では、神の約束の民であるユダヤ人たちはどうなるのかということを書き始めたのです。
ユダヤ人は一体どうなるのかということを、今の私たちはあまり気にしないと思います。ユダヤ人のことは良く分かりませんし、昔の出来事です。大切なことは、やはり自分たちのことです。けれども、この時代、聖書のことを知ろうと思うと、ユダヤ人たちの集まっている「会堂」「シナゴーグ」と呼ばれるところに行くしかありませんでした。そして、キリストの福音について触れた人たちも、自然にこのユダヤ人たちの「会堂」というところに集まるようになっていました。
そうすると、どうしてもユダヤ人たちと、主イエスを信じるキリスト者とかキリスト教会の人たちと、何がどう違うのかということを説明する必要があったのです。それで、パウロはここで丁寧に、ユダヤ人たちは神様に対して信仰的ではなく、神に逆らって歩んできたことと、それでも、神様はそのユダヤ人のことを大切に思っているということを語っていったわけです。
先週の「ざっくり学ぶ聖書入門」で、使徒の働きを学びました。前回は使徒の働きの2回目で、パウロの宣教の部分が記されている12章から最後の章までを扱いました。
パウロは、神から使徒として召されて、異邦人の伝道に遣わされます。三回にわたる伝道旅行で、かなり広範囲の地域に福音を宣べ伝えます。ところが、使徒の働きを読むと、異邦人伝道と言いながら、パウロはいつも、「会堂」と呼ばれたユダヤ人たちの築いた信仰と聖書の教育をする場所を伝道の拠点にしたのです。
ユダヤ人たちはその長い歴史の中で、「ディアスポラ」と言いますが、各地に「離散」してきます。国土を奪われたユダヤ人たちは各地に散らばって、そこでユダヤ人たちの集まりを作っていきます。その中心拠点になったのが、「会堂」とか「シナゴーグ」と呼ばれるところです。
私たちも良く分かっていることですけれども、この「ユダヤ教」と「キリスト教」には大きな違いがあります。ユダヤ教は「旧約聖書」しか扱いませんが、キリスト教には「新約聖書」があります。ただ、問題はパウロの伝道していた時にはまだ新約聖書はありません。その当時のキリスト教会は、旧約聖書をベースにしながら、主イエスの教えられたことをそれまでのユダヤ教の人たちの考え方とは違う解釈をしていきました。
それは、異邦人はキリスト者になるためにユダヤ人のように割礼を受ける必要はないし、ユダヤ人たちの生活習慣、おもに食物規定と言われる食べ物に関する戒めを守らなくても良いという考え方です。それで、エルサレムの教会は、パウロが第一回目の伝道旅行から戻ってきた後で、この問題について一つの見解を示しました。それは、異邦人たちにユダヤ人のような戒めを課さないということです。割礼も必要ないし、ユダヤ人の律法を守る義務も課さない。それが、エルサレム会議の結論だとパウロは理解したのです。
けれども、エルサレム会議は結論の最後に一つの文言をつけ加えます。これまでどの会堂でも大事なこととして扱ってきた食べ物の規定と、みだらな行いは気をつけるようにという一文です。そして、この最後の一文が付いたがために、パウロはその後も、どの町に行ってもユダヤ人キリスト者たちと戦うことになってしまうのです。やはり、パウロのしていることは、教会の主流の考え方ではないとなってしまったのです。
パウロにとって、このユダヤ人キリスト者たちというのは、ずっと伝道の邪魔をする嫌な存在でしかありませんでした。また、生粋のユダヤ人たちもなかなかパウロが語る福音を受け入れない心の固い人と思って来たはずなのです。
ユダヤ人たちの立場からしても、自分たちが建てた会堂で、自分たちが教えていることとは異なることをパウロが教えるわけですから、いい迷惑だったに違いないのです
そのパウロがここで、ではこのユダヤ人たちはどうなるのかという結論を語っていきます。それが、この11章です。
パウロはまず自分もユダヤ人であるということを、語り始めます。ただのユダヤ人ではありません。「アブラハムの子孫、ベニヤミン族の出身です」と語りました。 (続きを読む…)