・説教 ピリピ人への手紙2章1-11節 「橋をかける」
2013.7.14
鴨下 直樹
「香木は斧に香る」という言葉を最近耳にしました。香り高い香木は、自らを打倒した斧にさえもその香りを移すのだそうです。美しい言葉です。自分を切り倒してしまうこの斧の刃でさえ、香木の香りにつつみこまれてしまうというのです。この言葉を聞いた時に、ちょうど今日の聖書の箇所を現わしている言葉と思いながら、この一週間、御言葉を聞き続けてきました。
今日の聖書箇所は、ピリピ人への手紙第二章一節から十一節までです。特に、ここには「キリスト讃歌」と呼ばれる、当時の教会の讃美歌の言葉がそのまま紹介されていると言われています。それが、六節から十一節です。パウロの活躍した時代というのは紀元六十年前後ですから、そのころの教会にはもう讃美歌が生まれていたと考えられているのです。讃美歌を通して信仰が励ましを受けるというのは、今も昔も変わりません。歌うことによって信仰が支えられてきたのです。
宗教改革者のルターは讃美歌の持つ力を良く知っていた人でした。この讃美歌集の中にもいくつもルターのつくった讃美歌がいれられていますけれども、どれもキリスト教の信仰を説明するような教理的な内容の讃美歌ばかりです。この時代の人々は聖書を読むことができなかった人々が多かったために、讃美歌を覚えることを通して、信仰を支えようとしたのです。
この今日の箇所もそうです。どのようなリズムで歌ったのかはっきりしたことは分かりませんけれども、ここではキリストが何をしてくださったのかが記されています。この箇所の内容を一言で言い表すとすると、「キリストの謙遜」ということになります。昔は「謙卑(けんぴ)」という言い方をすることもありました。
この話をする時に、どうしてもお話しをしなくてはならない一つの事があります。 (続きを読む…)