・説教 「はこぶねの中で」鴨下愛
2022.11.20
鴨下愛
夜眠る時、目をつぶろうとする時、どうしたって怖くなって、不安になってお母さんを呼んだことはありませんか?私は小さい頃、夜になると、ここはベッドの上なのに、まるで小さなボートの上、暗くて重い霧の中、深い深い水の上を浮かんでるみたい。急に怖くなって、不安になって、泣き出してしまったことがありました。この世界はあまりにも広くて、知らないこといっぱい! 私の未来は、どうなるんだろうと怖くなってしまう、みなさんもそんな夜はありませんか。
今日は子ども祝福式の礼拝です。神様の祝福があなたと一緒に、いつもかわりなく、今も未来にもありますようにとお祈りするのです。
神様の祝福とは、いろんな意味がありますが、今日は一つ、「安心していられる」ってことを、ノアのはこぶねのお話から「はこぶねの中で」という題で、みなさんにお話ししたいと思います。
まず上を見てみましょう。木材がきれいに組まれて、窓がほとんどなくて、ここはまるで大きな船の中のようではないですか? では船の中に私たちも乗っているって、ちょっと想像して聞いていてね。
この絵の子どもたちは、うす暗い船の中で、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんのそばにピッタリすわって、じっとしていました。子どもたちはこの大きな船のことをはこぶねと呼んでいました。船の中はいくつもの小さな部屋に仕切られていています。どの部屋からも、動物たちの鳴き声が絶え間なく聞こえてきます。立ち込める動物の匂い。もう40日も雨が降り続けています。その間ずっと波の上を漂い続けていました。
時々ノア爺さんが、小さな窓を開けて外をうかがいました。けれどそのたびにすぐに窓を閉めなければなりません。大粒の雨が吹き込んできてしまいます。
「まだ、やまないのね」お母さんたちがため息をつきました。
「だいじょうぶだ。心配いらないよ」ノア爺さんがなだめるように言いました。
「でもノア爺さん、いつ、この雨はやむの?いつになったらこんな生活からぬけだせるの?いつになったらこの苦労はむくわれるの?」
みんなが不安になるのも、仕方がありません。大海になってしまった世界で、ポツンと一隻この箱舟は、行く目的地がないようにさまよっているのですから。
なぜこんなたいへんなことになっているのでしょうか?
それはこういうわけだったんです。
神様は世界を造られ、アダム、エバと名付けた、人を作られました。でも人の心に罪が生まれました。人間も動物も世界中に増え広がるといっしょに、神様を悲しませる罪も増え広がっていきました。
罪とは、差し出された神様の手を振り払うことです。愛されて造られたものが、つくり主に「あんたに造られた覚えはない」ということです。神がいては自分の好きにできないと思って、神などいないことにして生きるのです。しかし神様がいないので自分のことは自分でなんとかしなければなりません。人は心から安心することができなくなりました。安心できないので、戦います、傷つけます、奪います。いつのまにか世界に強い人と、弱い人が分けられました。あたりまえにお金持ちと、貧しいひとが分けられました。それが罪の増え広がった世界です。
そんな中で、ノアだけ違っていました。
もうお爺さんですが、いつも安心しています。なぜかというと神様を知っていたからです。知っているだけじゃなくて、小さい子どもが、お父さんお母さんにやっていいことか悪いことか聞くみたいに、神様に心を向けていました。お父さんお母さんが私をちゃんと見守っていることを確かめるみたいに、手をつないでもらって安心して歩いていけるみたいに、ノアは神様を信頼していました。
ある日神様はご自分の子どもに話すように、ノアに言われました。
「ノアよ、わたしはこれから大雨を降らせる。すると大洪水が起こるだろう。この世界の罪を、洗い清めたいのだ。しかし私はあなたと家族を救う。今からあなたは箱舟を作りなさい。大きさも、作り方も、乗せるものも全部私が言った通りにしなさい」 (続きを読む…)