2025 年 7 月 13 日

・説教 マルコの福音書6章30-44節「五つのパンと二匹の魚」

Filed under: 内山光生師,礼拝説教 — susumu @ 08:53

2025.07.13

内山光生

イエスは五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて神をほめたたえ、パンを裂き、そして人々に配るように弟子たちにお与えになった。また、二匹の魚も皆に分けられた。

マルコ6章41節

序論

 今日の箇所は、イエス様の行なった奇跡の中でも割と有名なものです。しばしば「五つのパンと二匹の魚」と呼ばれています。そして、この出来事は、マルコの福音書を含め4つの福音書すなわちマタイとルカとヨハネにも同じ内容が記されています。しかしながら、それぞれの福音書記者が強調している部分が少しずつ異なっているのです。

 ですから、私たちは「あ、この話は聞いたことがある。」と早急に判断するのではなく、今読んでいるマルコでは、この出来事から何を伝えようとしているのかを読み取っていくことが大切なのです。

 最初に結論をお伝えします。マルコによると、5千人の男たちに食事を与えるという奇跡が行なわれる前に、弟子たちを休ませようとしています。つまり、イエス様は人間の肉体の弱さを知っておられ、必要に応じて休息を取ることの大切さを示そうとしています。その流れの中で、大いなる奇跡が行なわれているのです。

 イエス様がこの奇跡を行なった目的は、イエス様は人々にみことばを語るだけでなく、人々の肉的欲求、この場合は、お腹が空いている状態をよく理解して下さるお方だということが示されています。そして、イエス様は人間の肉的欲求の一つである腹ペコになっているお腹を十分に満たして下さるお方なんだということが示されているのです。一言で言うとイエス様は私たちの身体に対して配慮してくださるお方なんだという事が示されているのです。

 順番に見ていきましょう。

I 休息するよう促した主イエス(30~31節)

 30節と31節を見ていきます。

 イエス様の使徒たち、すなわち、弟子たちは、二人一組となって伝道旅行に遣わされていました。この旅行は、彼らにとっては自分たちだけで行なった初めての伝道活動であって、かなりの緊張感や不安な気持ちがあったと思われます。また、色々な町や村を渡り歩いたために、肉体的な疲れを覚えていたと推測することができます。

 伝道活動を終え、彼らは、イエス様にどのような事が起こったのかを詳しく伝えたのでした。イエス様は使徒たちから一通りの報告を聞くと、すぐに「寂しいところへ行って、しばらく休みなさい。」と命じられたのです。自分たちの周りに多くの人々が出入りしていたので、あまりにも忙しくて食事をとる時間さえなかったからでした。

 私たちが伝道活動をする際に、これ程にまで忙しかったならば、かえってうれしい気持ちとなるかもしれません。そして、多少の無理をしてでも人々の要求に応えていきたいという思いが出てくるかもしれません。人々が救いを求めて集まってくることは、神様にとっても私たちにとってもうれしい事だからです。

 しかしながら、それでも休息を取る時間を削っていくならば、長い期間、活動を続けることができなくなります。それゆえ、イエス様は使徒たちに対して「しばらく休みなさい」と命じられたのです。使徒たちによる伝道活動は1回限りの事ではありません。この後、何度も何度も繰り返されていくのです。また、イエス様が天に昇られた後も、生涯、続けられていくのです。ですから、イエス様は、奉仕をする時と休む時の区別をしっかりするようにと促しているのです。

 教会において、伝道活動をする時も同じような事が言えるでしょう。つまり、自分たちの肉体的な疲れをきちんと回復させることも大切であって、その部分を軽く扱うと、結局は、長続きしない可能性が高くなるのです。

 イエス様は、私たちの肉的な弱さをよくご存知のお方なのです。ですから、私たちに対して「肉体の限界まで奉仕しなさい」とは言われないのです。むしろ、「休みなさい」と言って下さるお方なのです。その事を教会全体で共有していくことが、結局は、私たちが喜んで神様に仕えていくための秘訣となっていくのです。 (続きを読む…)

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